2018年5月13日日曜日

LTEモジュールでえらい目に会った



■トラブル発生■

「SIM7500JE-B2BというLTEモジュールをマイコンと接続する基板作って」という依頼を受けて試作したのですが…いやー苦労しました。

触ったことがないモジュールなので、仕様書の推奨回路の通りで作ってみたのですが…動きません。Power Key信号を送ると起動するんですが、シリアルに"AT\r\n"を送ってもOKが帰ってきません。

SIM7500JEのロジック回路は1.8V、マイコンは5Vなのでレベルシフタが必要です。レベルシフタにはTIのTXB0108RGYRが推奨されていたので、5Vでも対応可能なことを確認した上で使用しました。

信号を見ると、SIM7500JEからのLOW出力が0.4Vぐらいあります。Vthとしては微妙ってか、TXB0108RGYR的にはNG。仕様書には入力側のVL/VHは書いてあるんですが、出力については書いてないんですよね…。

■対策1-トランジスタレベルシフト回路■

結局、SIM7500JEからの出力には、昔からあるトランジスタ1個の非反転レベルシフト回路で処理しました。Arduinoで動作確認OK。

…まぁ、これで終われば半日仕事だったんですが、この後、ちょっと特殊なマイコンを使ったら動作せず。

■対策2-トランジスタとインバーター■

結局、昔からあるトランジスタ1個の反転型レベルシフト回路で1.8 → 5.0vに変換してから、インバーターで反転しなおして、Arduinoでも特殊マイコンでもOKになりました。作業時間合計11時間…バイトなので残業代でませんw

■教訓■

  1. 仕様書にVL, VHなどのごく基本的な資料すら乗っていないチップは使わない。
  2. 推奨回路など寸毫たりとも信じてはならない。そもそも双方向のレベルシフト回路いらねえじゃん、って話。
  3. 「テストポイントを用意しておくかな…でも、こんな基本的な信号で問題は出ないだろう」という判断は甘い。常に甘い。試作は全ラインを引っ張り出すぐらいの勢いが必要。でないと以下のような苦労をします(笑)。

■作業風景■

プリント基板のTxラインをUSB顕微鏡で見ながらデザインナイフでカットして、同じく顕微鏡を見ながら0.5mmピッチのコネクタからスズメッキ線で引き出しました。USB顕微鏡を買ったばかりの頃に試してみたらぜんぜんうまく出来なくて諦めていたのですが、最近背に腹は代えられぬ事態が多く、使っていたら馴れてきました。

やっぱり人間必要に迫られると適応するものです。

コツは、
  1. USB顕微鏡だと立体感がなくて上下方向の動きはよくわからないので…まず裸眼で基板近くまでコテ先やカッターを移動し、それから拡大された画面を見ながら作業する。
  2. USB顕微鏡が動かないように机にしっかり固定する
  3. 顕微鏡のステージに小指を置いて作業する
って感じでしょうか。0603(mm)のチップコンデンサなどで練習するとよろしいです。

また、写真のようなハンダ付けでは、
  1. コテがあたったら溶けてしまいそうな部品にカプトンテープを貼って保護する。その際、テープをピッタリと密着させるのではなく、熱が伝わらないように隙間を開けつつ何枚か貼ること。カプトンテープは熱伝導率が高いのでぴったり貼ると中の物を保護できません。
  2. マスキングテープで誤差0.5mmぐらいの位置にスズメッキ線を仮止めする。基板のパターンとマスクに段差があるので、この段階でピッタリの位置に置くのは難しいです。なので、あくまで仮止め。 
  3. USB顕微鏡をみながらピンセットで正しい位置に完全に合わせてから、マスキングテープをしっかり貼る。最後の0.1mm以下の調整は、スズメッキ線に直接さわるよりスズメッキ線の横からマスキングテープを押さえて調整する方が良いです。 
  4. USB顕微鏡をみながらハンダ付け箇所にクリームハンダを塗る。普段使っているシリンジだと針が太い/細い針だとクリームが出てこないので、マイナスのマイクロドライバーの先にちょこっとつけてから、左にドライバー、右手にピンセットを持って、蟹が食事をするような気分で目的の箇所にハンダを置きます。 
  5. あとはハンダゴテを目的の箇所に当てるだけ 
です。

【追記】カプトンテープはぴったり貼らないでふわっと隙間をもたせて何枚か貼ると良いとのアドバイスをいただき、記事に反映させました。ご教示いただきありがとうございますm(_ _)m【追記終わり】

島津とかモノタロウの立体顕微鏡試してみたいんですが、お試しで買って失敗したらかなり辛いお値段。私が買えるような安いやつはレンタルなんてやってないですし。お友達の歯科技工士さんは「工場落ちのニコンの中古最高」って言ってました。

うーん。でも買うんだろうなぁ…きっと…。

4 件のコメント:

  1. うっかりコテで触って溶かしちゃ行けない所は、カプトンテープをふわぁっと、出来れば皺を作りながら2~3重に貼って空気の層を作ると良いです。しっかり貼るとテープは溶けずに貼った樹脂モノが溶ける可能性があります(ちゃう、溶かしましたorz)

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    1. なるほど! 確かにそうですね…耐熱性も高いですが、熱伝導率の高いのもカプトンテープのウリですもんね。

      記事訂正しました。

      もしや以前、ヒーティングガンで部品を外すときのカプトンテープの使い方をご教授くださった方でしょうか。その節は、および、今回も貴重な情報ありがとうございます。

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  2. SIM7500のUART、 TXB0108
    VOL=0.45V(max) < VIL=0.63V(max)
    VOH=1.35V(min) > VIL=1.17V(min)
    仕様的に問題はないように見えますが、、、

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    1. いただいたコメントに気づくのが遅れて申し訳ありませんでした。

      当時、納品先から「VLが浮いている」という指摘を受けて資料に当たったのですが記述が見つからず……計測データを覚えていないのですが、通常のTTLなどよりも高い電圧が出ていたと思います。

      ただ、今に思えば特殊マイコン基板の設定ミスによってSIM7500の反対側からバイアスがかかった状態だったのではなかったか?と思っています。双方向のレベルコンバータ便利ですけど、トラブルになった時の切り分けが大変だなぁと……

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